数列の極限と不動点定理
導入
以下はバナッハの不動点定理(縮小写像の原理)のwikipediaからの引用である。
定義 (X, d) を距離空間とする。このとき写像 T : X → X が X 上の縮小写像であるとは、ある q ∈ [0, 1) が存在して、
が X 内のすべての x, y に対して成立することをいう。
バナッハの不動点定理 (X, d) を空でない完備距離空間とし、T : X → X を縮小写像とする。このとき、T は X において唯一つの不動点(すなわち、T(x*) = x*)を持つ。この x* は次のように見つけられる:X 内の任意の元 x0 に対し、数列 {xn} を xn = T(xn−1) で定義する。このとき xn → x* である。
漸化式で定義された数列の収束に関する問題に対し、このバナッハの不動点定理が有効な場合がある。
簡単な例
もう一つの例
弱縮小写像に対する不動点定理
応用例
縮小写像が作れないが弱縮小写像は作れる例を挙げる。これは高校数学の知識のみで解こうとすると難問である。
ネイピア数、二通りの表示
初投稿です。
テーマはネイピア数というよりは極限の扱いついて気を付けるべきことです。
導入
数学系YouTuberの鈴木貫太郎氏が投稿されたネイピア数についての解説動画を見ていた時、一か所気になる説明があった。(ネイピア数を理解する上ではさほど重要な箇所ではないが)
ここではネイピア数を次のように定義する。
ここで3項目、4項目、…はでそれぞれに収束するから結局、次の表示を得る。
integraldx.infoosinko.hatenablog.jp普通、このネイピア数の表示は指数関数のマクローリン展開などを用いて導くのが一般的だと思うが、ここでは上記の議論を修正する方向で導出したいと思う。
どこがおかしいのか
先ほどの式をΣを使って表しておく。
ここで、とおくと
であり、が成り立つ。
一般的な状況を考えよう。(二重)数列に対し、とおく。
もし各kについて、は収束するならば、が成り立つというのが今回議論の焦点にしている主張である。
しかし、この主張が偽であることはすぐに分かる。
反例:(kに依らず)と定めれば、となるが、明らかにであり両者は一致しない。
もっと自明でない反例としては、この動画の前半の解説におけるの場合がある。これはまた別の機会に考察してみたい。
議論の修正
ここではネイピア数が収束することは認めることにする。
項ごとの収束と項数の増加、両方を同時に扱うのは難しいのである適当なNで項を打ち止めにしてみる。
(1)上から抑える
自然数Nを任意に固定する。N≦nとなるnに対し、
ここでとすると、
ここでNは任意の自然数なので、これは任意の自然数Nについて成り立つ。
は上に有界な単調増加列なので収束し、とすると、
が成り立つ。
(2)下から抑える
よりとすると
以上より が示された。
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極限を二段階でとる議論は高校数学ではまず見ることはないので慣れないと難しいかもしれない。